第5学年国語科学習指導案

                  1995年12月1日(金) 第5校時  

                           5年B組     指導者 上野 芳樹

1.教材名 「ちびへび」 (工藤 直子作)

 

ちびへび  工藤 直子

暖ったかいのだもの
散歩はしたいよ
ちびへびは
おうちに鍵をかけて
ぷらぷらでかけた


こんちわというと
小鳥はピャッと飛びあがり
いたちはナンデェとすごんだ
あら おびに短したすきに長しねと
仲間は忍び笑いをした

ちびへびは急いで家にもどり
おうちの中から鍵をかけ
燃え残りの蚊取り線香のように
まるくなって、ねむった
でも……
暖ったかいのだもの
散歩はしたいよ

ちびへびは
もういちど でかけた
誰もいないところまで
──こんちわ いわずに
──ぷらぷら しないで

 

 

2.教材解釈 

 ぽかぽかと暖かく心も浮き立つような春。ちびへびはうきうきと弾んだ気持ちで散歩に出かける。「暖ったかいのだもの」「散歩はしたいよ。」「ぷらぷら」などの言葉に、こんないい日に家の中でじっとなどしておれないという気分、春の日差しや景色に心地よく浸っているちびへびの姿を読み取ることができる。

 しかし、途中で小鳥やいたちのからかい、仲間の冷笑を浴びてちびへびは家に逃げ帰ってしまう。弾んでいたちびへびの心を凍らせてしまったものは何だったのか。わざと大仰におどろいてみせる小鳥のしぐさ、「ちび」と見くびってすごむいたちの態度にいたたまれなかったということもあろう。しかし、それにもまして「仲間の忍び笑い」はちびへびの心を突き刺した。本来悲しみを分かち合い支え合えるはずの「仲間」から「忍び笑い」によって疎外されているという孤独感に耐えられなかったのだ。

 逃げ帰ったちびへびは、悪意に満ちた外界と自分の世界を断ち切りたいような思いで、「おうちの中から鍵をかけ」る。「燃え残りの蚊取り線香のように」という比喩は、憤りとか悲しみの感情すら抜け落ち、絶望的な孤独感にうちひしがれているちびへびの様を表している。

 しかし、春の日差しを思う存分浴びて楽しみたいという生の欲求が心の奥底から突き上げてくる。それは、ちびへびの自我意識のめざめにつながっていく。二度目の「暖ったかいのだもの、散歩はしたいよ。」には「俺だってみんなと同じだ。散歩したいんだ。散歩して何が悪いんだ。」という主体的な意思がこもっている。

 ちびへびは、もう一度出かけた。敢えてさっきと同じ道を、堂々と。しかし、心の底には悲しみたたえて。

3.児童の実態

 休み時間の子どもたちの姿は、明るく和やかで、お互いの関係はかなり良い学級である。学級みんなでの大縄遊びに楽しそうに参加しているし、男の子と女の子の間も変にぎすぎすした感じはなく、むしろ中学年的なくったくのなさで接している。今、全校集会に向けて取り組んでいる群読「お祭り」にしてもグループでわいわい言いながら楽しげに声を張り上げてやっている。そこには非常に解放されたほんとの子どもらしい姿がある。
 ところが、授業になると、なぜかひどく消極的になってしまう。がさがさして騒がしくなることはあまりないのだが、子どもらしい勢いがない。「ぼく、思ったんやけどな……」と自分の読みを率直に語り出す子は少なく、友だちが何か発言してもよそごとのように聞いている雰囲気がある。そんな状態だから、ある子が直観的にいい読みを出してきてもみんなに響かず消えてしまう。黙って座っている子にも指名して考えを引きだそうとするのだが、「Aと思うか、Bと思うか」という選択肢的な問いに答えるのがやっとで、そう考えた理由を問えばたちまち困惑して口を閉ざしてしまう。一人の発言に「私も同じ。」と安直に同調してしまう傾向も見られる。読む力、表現する力が貧弱なのかというとそうでもない。一人勉強の書き込みなどはほとんどの子が自力で進められるし、内容的にもかなりよく読めている。
 発言できない子の思いを聞くと、「間違ったらはずかしい。」という声が圧倒的に多い。何とかそこを乗り越えるもう一歩の勇気が持てない子が半数いるのが今の状況である。

4.この授業で試みてみたいこと

 今私のクラスで実現したい授業は「みんなで考え合うことを楽しむ授業」である。内容的に深く追求できなくてもいい、一つの疑問をみんなで知恵を出し合って分かり合う、そんな場が作れたらいいと思っている。引っ込み思案で傍観者的に聞いている子どもたちを話し合いの場に引き込むために、具体的で自分なりに立場を明確にできる課題(問い)の工夫と、一人の発言をみんなで共有する過程を丁寧に進めることを心がけたい。

 

5 指導計画(全2時間)

 第1時 物語の筋をつかみ、自分なりの読みを持つ。

 第2時 各自の読みを交流しあいながらちびへびの様子や心情を読み深める。

 

6.本時の目標

 敢えてもう一度同じ道を散歩に出かけるちびへびの強い決意とその奥のさびしさを読み取る。


授業記録

 

Cめいめいで読む

Tはい、じゃ読んだろうって言う人

 はい、晴美ちゃん

晴美 読む

T見事に読んでくれたね

 よし、今度は、男の子で誰か。達則君

達則 読む

Tはい、二人ともとっても気が入っていていい読みだったね。

 ところで、みんな、これはちびへびがどうした話か、見ないでいえますか?

 いっぺん、自分自分で言ってみ

Cめいめいであらすじを言う

T誰か、こんな話やでって言ってくれる?……俊博君

俊博 ちびへびが、あったかいから散歩にいきよって、「こんちわ」いいよったら、とんでいって(T誰が)小鳥が。いたちか何かわすれたけどすごんだ。いそいで家に戻って

家の中から鍵かけて、燃え残りの蚊取り線香みたいに寝て、また、どっかへいきよった。

こんちわいわんと誰もいんところへ

Tもう一人言ってくれる?

駿祐 えっとな、散歩にでかけて、こんちはというと、小鳥がピャツと逃げていってな、いたちは「なんでえ」ってさけんで、ほんで、わらいよって、仲間がわらいよって、

雅史 仲間って誰?

Tああ、……仲間って誰やと思ってるの?

Cいたちと違うの?

Tこれ、疑問やね。のこしとこう。仲間がわらいよった。それで

駿祐 急いで家に帰って、家に帰ったら鍵をかけて、ほんで、燃え残りの香取線香のように丸くなって眠った。ほんで、……もう一度散歩にでかけて、誰もいいひんところへ行った。

T今、俊博君と駿祐君に言ってもらったんだけど、それでいい?

 それでいいか、もう一度自分自分で読んで

C読む

Tはい、だいたいこれでよかった?

 じゃ、これから勉強していくだけど、昨日一時間一人勉強したやん。先生、さっきちらちらと見たら、みんな、「わからん」ってことがいっぱい書いたったん。何でやろ、何でやろって。

 わからんことがあった人

C挙手

Tじゃ、疑問があった人立って。

 今すわっている人は、答えてもらうから。わからんことがいっぱいある人ほどよい勉強ができる。

 

 じゃあ、育美ちゃん言ってくれる?

育美 ちびへびは急いで家に戻っっておうちの中から鍵をかけたのがわからん

T 何で急いで帰ったかがわからない。(Cわかるという声)そして、何でうちの中から 鍵をかけよったのかわからない。

 はい、よくにた考えだっていう人

公美 私も鍵をかけたところ

T いっしょだって言う人。……その人たちは座って。まだ、他にある人

Cはーい!

潤 何でこんちわいわんと

T 今、潤が言ったの分かった?

城野 なんで、こんちわとかぷらぷらとかしないでいったのか

T二回目の散歩はこんちわって言ってないね。プラプラもしてないね。何でやろ

Cそれ、分かったわ

Tうん、分かったっていう人はまたあとで教えてもらおう。

 はい、潤と同じところの人手を上げて。はい、その人たちは座って。まだある人

Cはーい

志保 小鳥はピャッと飛び上がりというところで、何でちびへびがきたとき、飛んで行ったのか

Tはあ、ここもわからん。はい、志保ちゃんと同じ疑問がある人。はい、まだある人

寛 二回目の出かけたとき、鍵をしめなかったのは

T二回目のは、書いてないな。鍵をかけてとは書いてないね。

麻衣子何で誰もいんところまで行ったのか

Tはい、まだある人

城野 仲間は忍び笑いをした、っていうのがなぜ、笑ったのか。

Tこれもわからん。ようけわからんところあるね。

慎介 なぜ、燃え残りの蚊取り線香みたいに眠ったのか

Tここもわからん。もう全部やな。はい、慎介君と同じ人。

将範 まだある。ちびへびは大人か子どもか

Cわからん

T大人?子ども?うん……

一樹 笑われたのに何でまた行くのか

T一樹君のわかった?

 いっぺんめ笑われたのに何でまた行くのか

内堀 ちびへびは何の種類か(C笑い)

昌子 なぜ、暖かかったら散歩がしたいのか

Tもう、こんでみんなの疑問全部出た?

 勉強っていうのは、こうやってわからんところが分かっていったら勉強だからね。

 どこから行くといいかな。

C口々にいう

T取りあえずは、お話の筋でみんなの疑問を解決していって、残ったらまたいきましょう。

 じゃ、一連見てくれる。

 「暖かいのだもの……」

 昌子ちゃんが、何で暖かいと散歩に出かけたくなったん、て

C暖かいから

麻衣子 暖かいから

Tはい、それから……昌子ちゃんは、暖かかったら何で行きたいの、そこが知りたいって。

浩邦 友達がいないから?

T ほう、聞いとけよ。

一樹 一回も外に出た事がないから

公美 暖かい日やったら気持ちがいいから。

寛 ひまやから

城野 一人ぼっちでさびしい

T どうもこのちびへび、一人で家におるみたいね。暖かいのに一人で家にいるのはなん かさびしかった。

駿祐 先生、さっき言うの忘れた。何でぷらぷら行くのか

  始めはぷらぷら出かけたのに、あとはぷらぷらしいひんのか

Tほやほや。始めのプラプラがわかるとあとのも分かるかもしれんな。

 ほと、みんなのでいうと、暖かい……季節はいつ?

C春 夏 秋、など勝手に言っている

T内堀君が面白いこと言ってる

内堀 冬眠してから出たん

潤 へびが冬眠してて、暖かくなったから

Tほう、さっき一樹君がいっぺんも出てへん、て言ったね。ひょっとしたら冬の間じいっとしていて、春になって久しぶりに出た、と考えてもいいかもしれないね。

 で、一人でおうちにおっても、こんなに気持ちがいいのに家にいてるのが暇?、しょうもないと思って出た。

 で、その出かけていくときがプラプラって書いてるね。

プラプラって、どんなちびへびが見えてくる?……プラプラでかけた

 お、慎介君

慎介 ゆっくり

C のんきに

喜枝 わくわく

Tわくわく?何で

喜枝 えー、久しぶりに出たからなんか景色とか見たい。

T景色を、久しぶりの景色をのんびり、わくわくしながら

駿祐 ねぼけてた。(C笑い)わけは、冬眠から覚めたばっかりだから、なんかねぼけてると思う。

Tああ、なるほどね。体もぼうっとした感じで、「おお、ええ気持ちやなあっ」て。

一樹君は?

一樹 夢みたい

T夢みたい……何で?……うまく言えないか。何かプラプラっていうのは、のんびり、ゆっくり、楽しそうに行っているね。

 さあ、そんなふうに行っているちびへびが……ここがわからない。「こんちわ」って言ったらこんな目にあった。いったい何でしょうね。もういっぺん二連を読んでみましょうか。

はい、二連見てくれる。「こんちわというと……」(教師読む)

三つともわからんのやな。じゃ、小鳥から行こうか。雅史

雅史 えっとなあ、何でぴゃっととびあがりよったかというとな、にげよったんや。へびがこわいから。ほんなん前な、ちっこい鳥飼ってたら、ほれへびが食いやがったんや。

(笑い)

Tおうおう、なるほど。実感こもったるなあ。雅史君ちは、小鳥を飼ってたのをくってまいよった。それぐらいへびはこわい。

雅史 ほんでな、まだあるねん。このへびはな子どもやと思う。何でかというとな、……

 えっと、大人ならこんちわなんかいいよらへんも。鳥に。ほんで、鳥をねらいよる。

Tうん、わかった。「こんちわ」って言い方は、何かかわいらしい感じがするのが一つと、

今、問題は、志保ちゃんが言ったの。何で飛び上がったのというのは、こわくて逃げたんだ。ああ、そうだっていう人。

Cわからん

Tそうじゃないんじゃないっていう人?

 あっ、惟ちゃん違うって

惟 ちびへびは、大人のへびになっても小さいままで、ほんで、ちびへびは避けられてるの

T……ほう、何ていいよったか分かった?こわくって逃げたんちがうちゃうって

喜枝 いじめてるん(つぶやき)

浩邦 このちびへびは仲間はずれにされているからにげよった?

駿祐 えっとな、忍び笑いをしよったから、隠れて笑ったいうことやから隠れて、「何でこんなちっちゃいやつがきとるねん」て笑ってしまいよるん。

Tああ、忍び笑いはな。この「ぴゃっと飛び上がり」は?逃げとるのと違うのか。

駿祐 ちがう

滋司 ちびへびは嫌われている

寛 ちびへびと小鳥といたちは仲が悪い

Tほうすると、今、二つの考えが出たるんよな。雅史君はこわくって逃げていったんだと読んでるのね。あと何人かは、ちびへびが嫌い?ほんで

Cいじめてる

孝介 遊ぼうとか言ってきても、「お前なんかいやよ」ってふっと避ける。

Tほういうのあるね。遊ぼうって言ったときに、へーんて避けられる感じね。

Cどっかいけって

Tどっちの感じがしますか?これ読んでて。

 手を上げてごらん。こわくて逃げたんだという人……

 いや、お前みたいいやよーって避けたんだっていう人……

Cわけもあるで!

Tわけも言える?

滋司 こわないわけは、うんと、さっき雅史君がいわった子どもやったらほんなにこわな  い。

孝介 もし、大人のへびやったら、いじめたら反対に食われてしまうから。

Tこわい大人のへびやったらほんとに逃げるけど、ちびへび、ちっちゃいへびだから。

雅史 これかって小鳥やん。

  えっと、いじめられてるんやったらこんちわなんかいいよらへんやん。

内堀 ちびへびも子どもやったら逃げよるかもしれん。

T ああ、じゃ、ここは残しとこうか。でも、ほういう読み方が二つあるってことにしとこうな。

駿祐 けどよ

将範 もし初めて外へ行ったんやったらちびへびのこと知らんやん。ほんな、いじめられてるとかそんなん違うんちゃう?

Tうん、ほと、お前はどういう考え?

将範 わからん

Tわからんけど、ここ、二つの読みがある。こわくて逃げたというのがあるかもしれんね。へびって気持ち悪いしね。でも、そういうことと、いやがって避けたんじゃないかというのと二つあるかもしれないね。

 あと、「いたちは……」

孝介 何でカタカナなん?

駿祐 何でこんなちびがこんなところにきとるねん

T駿祐が言いたいことわかる人 「なんでえ」の気持ち言うとるんや。

 何でこんなちびがきよるねんって馬鹿にしたような感じで「ナンデエ」ってすごんどるんちがうかって。

雅史 えー、すごんどるのと違うの?

T「すごむ」ってどういう意味やった?調べたな。怖い顔しておどしよるんやろ。

喜枝 遊んでる

T遊んでる?えーっおもしろいこと言うやん。

喜枝 だからな、ちびやからな、怖い顔しておどかそうとしとるんや

T 聞いてなあかんがな

  もういっぺん言って

喜枝 小さいへびやからいたちが怖い顔して一回おどかしたろうと思って遊んどるん

T……そういう気持ちわかる?

C追い払っている

一樹 えっとな、いたちは、ちびへびが小鳥をぴゃっと飛び上がらせるほど怖いとはおもっとらへん。ほんで、いたちは、なんか、いじめられると思って「ナンデエ」って追い払う

駿祐 遊んどるんやったら、今のうちに仲間に入れておこうと思ってる。もし自分が危なくなったとき、でかくなったら助けよるかもしれん。

Tあ……喜枝ちゃんが言った「遊んどる」というのは馬鹿にしとるっていう意味や。

駿祐 馬鹿にしとるんか

Tうん、さかろうて遊んどるんちがうかって。

 で、もう一つ、ここ行こうか。「なかまは……」

 この「仲間」って誰?てさっき言ってましたね。みんな、誰と思ってるの?

Cへび

T智博君は?

智博 へび

Tへびの仲間

Cいたち!

Tはい、いたちという人がいますね。それから、小鳥の仲間?いろいろ言うてるね。

 読めばわかる。これは、へびの事を言ってるのか、いたちのことを言っているのか、小鳥のことを言っているのか、読んだらわかる。

Cいたちよ。

C絶対いたちや。

T読むぞ。「こんちわというと、……」

 この仲間は誰でしょう。

 手をあげてみ いたちという人……

        へびだという人……

        小鳥と言う人……なし

 じゃ、読んで、証拠を挙げてごらん。

浩邦 ちびへびの仲間やったら、「あら帯に短したすきに長しね」って言わへん。

  いたちの仲間やったら

T分かった?

C分からん

T浩邦君は、仲間がこんなこというはずがない。同じ仲間が。同じ仲間が馬鹿にするかい なあって。

Cほんなん人間どうしでも……(つぶやき)

Tまだ、いたちやっていう人。

 じゃ、これはへびだっていう人……講平君。

講平……ちびへびは、(うまく言えない。不明)

Tもういっぺん、言ってくれる。みんな、よう聞いていよ。

講平 小鳥は逃げたけど、いたちは逃げてないから、帯に短したすきに長しと言ったのは へびの仲間と思う。

T聞いてた?たぶんこういうことかな……。講平君は、小鳥はぴゃっととびあがった。そういう態度をとった。いたちはナンデエってすごんだね。仲間は忍び笑いをした。だから、これとこれとこれはちがうもんやろって言ってやる。

 へびの仲間だって、まだ言える人

歩 えっとな、いたちの仲間やったら別に忍び笑いせんでもいい。

T……歩がすごいこと言った。歩はこれは絶対にへびの仲間やて。いたちの仲間なら忍び笑いはしない……。誰か言える人ない?鐘伍君。鐘伍君もへびの仲間やと思うんやろ。

鐘伍……

T言葉にならんか。……ああ、分かってる人もいるやん。歩の考え、すごく大事やで。

 慎介君

慎介 いたちやったらちびへびの前で堂々と笑うけど、へびの仲間やったらちょっと隠れ て笑う。

Tへびの仲間だから、こっそり

一樹いたちやったらなあ、大きい声で笑う。

T……喜枝ちゃんが何か面白いこと言うとる。

喜枝 へびには長さがあるんやろ。でも、いたちにはそういうことは関係ない。長さみたいどうでもいい。

Cほんまや

T雅史。今、二人が言ってること言うてみ。これは、へびの仲間なんですよね。それを見事に言っている。どういうこと?

雅史 え……

T何といって笑っているんですか「帯に短し……」これはもう調べて知ってるね。ちゅうと半端な長さよね。役に立たないね、て馬鹿にする言葉ですね。

 これは、へびの仲間だから言っているんだ。いたちの仲間だったら言わない。

Cなんでえ?

T喜枝ちゃんの言ってること分からん人

C挙手

T滋司君言って

滋司 忍び笑いをしたんだから、へびは長いから、いたちだったらそんな関係ない。

Tいたちにとっては長さが長いからどうとか、短いからどうとか関係ないわけね。

 へびの仲間で、自分らは一人前の長さがあるから、「へん、ちびよ。中途半端な」て笑えるんよって。

周防 だからちびへびって名前がついたん。

Tね、ちびって、一人前のへびから見た馬鹿にした言葉なんですね。

 仲間は忍び笑いをした……

 で、こういう目に合って急いで、帰った。もうわかるね。阿沙美ちゃん

阿沙美 仲間に笑われて悲しかった。

長谷川 阿沙美ちゃんと一緒で仲間に笑われて悲しかった。

T 悲しかったのはわかるね。この中の一番ずきんと来たのは誰でしょう。

Cはい!(圧倒的に仲間)

T仲間の忍び笑いが何でそんなにずきんとくるの?

孝介 同じ仲間に馬鹿にされてるみたいやから。

C仲間同士に馬鹿にされた

内堀 友達やのに馬鹿にされたらむかつく

チャイム

喜枝 友達やと思っていた人に馬鹿にされたらいやや。

T全然関係ないやつに馬鹿にされるよりも自分と友達やと思ってる人に馬鹿にされたらこんなつらいことはない。この前も昌子ちゃんが言ってたね。

 さっき浩邦君がこれは、へびとちがうでって言ったね。これはいたちだって。何でやって言ったら、仲間っていうのは友達やろ、友達がそんなひどいこというはずがないから仲間じゃないだろうという読み方をしていた。ほんとなら助け合えるはずの仲間に忍び笑いされて、もうたまらず帰ってしまった。

 

 《ここで時間となったので切る》