考えることにねうちがある
「じしゃくについたくぎのせいしつ」 



教科書にこんな問題が出ています。
 
 
○磁石についた釘は磁石になるか。

○もし磁石になるとしたら、極はどうなるか。


 教科書の問題をみんなで考えました。実験すれば、すぐわかることですが、その前にみんなのちえを出し合って考えてみました。
 すでに、これまでの磁石遊びで、磁石にくっついた釘も磁石のようにすいつける力をもつことまでは、知っています。そこで、では、その釘は、いったい、どんな極を持つ磁石になっているのか、ということにしぼって考えました。

まず、最初に手を挙げてくれたのが、清志君。清志君は、
「磁石のN極にくっついてるんやで、釘はN極になる。」

   
     
なるほど。N極の力が、釘に伝わって、釘全体がN極の性質をもつという考えです。すると、今度は、亮君が
「N極についてるんやで、釘の頭は、S極やと思う。もし、N極やったらくっつかへん。」

なるほど。これももっともらしい考えです。それを聞いていたとなりの席ののりたか君が、
「ほんで、先の方は、反対のN極になる。」
といい出しました。
「確かに、どんな磁石もN極だけの磁石とか、S極だけの磁石なんてなかったね。どんな磁石もNS両方あったね。」
亮君の意見を聞いていた絵麻ちゃんが、
「ほんでもなあ。釘って、はじめは、鉄なんやで、べつにN極とかS極とか関係なしにひっつくんとちがう。」
と反対意見を出してきました。

  

 そう言われると、またそれもそのとおりです。
今度は雄介君が手を挙げました。
「ぼくは、釘全体がS極になると思う。」

  
雄介君は、亮君の考えと清志君の考えを取り入れて、また別の考えを出してきました。つまり、N極にくっつくのだから、釘の方は全体がS極になる、というのです。この3つの考えは、どれももっともな理由があります。
「みんなは、どの考えにさんせいするかな。」
と、手を挙げてもらったところ
清志君の考えと、雄介君の考えのふたつに分かれて、亮君・のりたか君の考えへの賛成は、8人ほどでした。
そこで、
「では、これから実験して、どれが正しいか調べてごらん。やり方は自分で考えて。」
といって、実験にとりかかりました。

 最初は、みんな、釘をつけているだけです。そのうちにのりたか君がすごいことを見つけました。
「磁石につけたこの釘とこの釘をくっつけたら、頭と先はひっつくけど、頭どうし、先どうしやと、つかへん。」というのです。

 さっそくみんなでも実験してみました。確かにのりたか君の言うとおりです。
ということは、釘もやはり、N極、S極があるようです。では、いったいどちらがNで、どちらがSなのか。
 
 ここから先は、教科書の実験どおり、方位磁針を使って調べることにしました。方位磁針のN極に釘を近づけてひっぱりあったらS極、にげたらN極ということになります。
その結果は、「釘の頭はS極」でした。そして、釘の先はN極ということもわかりました。

 磁石を2つに切ったらどうなるか。

次の時間は、こんな問題を考えてみました。
やはり、予想どおりさまざまな考えが出され、とてもおもしろい1時間になりました。
T.さあ、磁石をまんなかで、二つに切ったら、その二つは、いったいどんな磁石になるだろうか。ノートに自分の考えを書いてごらん。


子どもたちのノートを見て回りながら、黒板に書いていきました。

①満君・和生君の考え

 

②亮輔君・基臣君らの考え
  

③美奈ちゃんたちの考え
  
 まず、自分は、どの考えか、手を上げてもらいました。①12人、②2人 ③17人

 次に、それぞれの考えについて、どうしてそう考えたかを言ってもらいました。
和生
「前の時間、くぎを磁石にしたときもなあ、くぎがNとSになったやん。ほんで、これもNとSになると思う。」

それに対して亮輔君は、
「くぎは、はじめただの鉄で、あとから磁石になったんやけど、これは、初めから磁石やで違うと思う。これは、初めから磁石やで、切ったら、Nの磁石とSの磁石になると思う。」

次に美奈ちゃんは、
「前、磁石を調べたとき、はしっこはくっつける力があるけど、真ん中は、くっつける力がなかったから、切ったら、真ん中やったところは、つかへんと思う。」

 それぞれ、前の時間の学習と結び付けて自分なりの考えをだしてきているのがとてもいいです。さて、それぞれの考えを聞いた後、また、手を上げてもらいました。すると、③の美奈ちゃんたちの考えがいいと思う子がぐっと増えて23人になりました。

 すると、和生君が、勢い込んで言いました。
「ほんでもな、はじめは、真ん中でも、切ったらはしっこになるやん。ほんでつくと思う。」
美奈ちゃんも負けてはいません。
「もし、くっつくとしたら、Nの力が伝わっていって、②みたいに全体がNになると思う。」
ここで、今まであまり賛成する子のなかった②の考えがきゅうに良いものに見えてきました。

大輔君も、
「ほやし、Sの力みたい、こっちにはあらへんやん。どこからSの力が来るん?」
と応援します。

ここで、亮君や雄介君が強力な反論を出してきました。
「前の時間、くぎでやったときも、N極につけたくぎは、全体がS極にならんと、S極とN極にわかれたやん。ほんで今の切ったときも、S極の力はなかってもできると思う。」
 中心になって発言している子はいますが、発言してはいない子も聞きながら一生懸命考えています。 そして、ここまで聞いてきて最終的には①の考えに賛成する子が圧倒的に多くなりました。

 そして、いよいよ実験です。みんな、自分の磁石を切るのはもったいないようなので、先生の磁石で試してみることにしました。結果は、①。思わず歓声があがりました。
 こうして、みんなは、また磁石について、また一つ新しい性質を見つけました。磁石はどんなに分解しても、必ずNとSの極ができるということを。

 みんなで知恵を出し合って問題を追求することはおもしろいなあ、ということが実感できた、そんな2時間でした。