「学校の勉強楽しいわ!」 
 2年の頃から不登校になっていたAちゃん。
 いろんな経過があって、今、二学期の始まりをきっかけに、
「個別に勉強するなら学校へ行く」
というぐらいに学校への意欲が高まってきました。母親と話し合った結果、私と教務二人の三人で、一日2時間ずつの個別指導の時間を確保して受け入れ体制を作りました。

「黒板を使った勉強がしたい。」というAちゃん。みんなと同じように学習したいという気持ちの表れでしょう。
 私は国語の担当。手始めに「春のうた」の詩〔草野心平〕をやってみました。

前書きの部分は紙でかくしておいて、読ませる。カエルが主人公の詩ということを見つけさせるのが目標。
 
 読んでもらうと、小さな声だがすらすら読みました。

T じょうずや。こんどは、そこの壁に人がいると思ってその人まで聞こえるように読んでごらん。
 少し大きくなる
 
Tこの中でわからないところある?線引いてみて
Aいぬのふぐり ケルルンクック
 
Tこれ、何かなあって考えながらもう一度読んで。
 部屋の端へ動いてすわる。
 じゃ、こんどは先生に聞こえるように読んで。 聞こえたら○や
 Aちゃん、はっきりした声になる。
 
Tじゃ、わからないところから考えていこうか。
いぬのふぐりって何かな?
 いぬのふぐりがさいている。さいているってことは、いぬのふぐりって何やろ。
Aおはな?
T そうやね。さいているってことは花やね。じゃどんな花か。ヒントはこれ。「春のうた」
さくら?
 さくらだったら、ほっ、さくらがさいているって書くね。
 Aちゃんもよく知っている花だよ。(説明)
 
T じゃ、ほっ大きなくもがうごいてくるは?。
A空の雲
T うん、そこで問題。ほっ、いぬのふぐりがさいている。ほっ、大きなくもがうごいてくる、て見てるやつがいるんだね。それは何か?ていうこと。
 
よーく読むと何かなあってわかるところがあるんだよ。
A……
T一つだけヒントあげよう。これ、人間じゃない。生き物。さあ何か?
 
Aかえるさん?
 
Tほーっ、かえるみたい?……どこでそう思ったの?
A]ケルルンクックて なんかカエルのリズムみたい
Tほう、ケルルンクックがカエルのリズム、鳴き声みたい?
Aうん
Tなるほどねえ。ほかにもこれ、やっぱりカエルだぞって思うようなところある?
 
A水はつるつる
Tどうして?
Aカエルさんて、水の中にいる?
うん、田圃とか川べりとか水のところにいるね。
Aカエルさん、水の中にいるから、水はつるつる
T なるほど。
 じゃ、答え言っちゃおう。Aちゃんの言うとおり、これカエルさん。
 
T ではね。「ほっまぶしいな」て、どうしてカエルさんがいうのかな?
A……
TAちゃん、今、まぶしいなって思う?
Aううん
Tまぶしいなって思うのはどんな時
A外に出たとき。家の中から外に出た時、まぶしいって思う。
 
Tうん。じゃカエルさんが外に出たときって……
A……
Tかえるさん、一年中いる?
春は? いる 夏は いる 冬は?
A いない
Tどこにいるの?死んでしまうの?
A土の中
土の中で眠っているの。
だから、目が覚めて、起きてきたら まぶしいなあって思うの
 
今、Aちゃんの言ったとおりのことが書いてあるよ。
 前書きを読む。

こんなふうに、けっこう自然な感じで勉強してくれる。

「あっというまに2時間ぐらい過ぎてしまうわ。もっと勉強したいわ」
とおうちで言っているとのこと。
何とか、この調子で学校に復帰していってくれるとうれしいのですが。