ちょっと壁を開いてやれば……
 今年も水泳シーズンがやってきた。
 
体育主任の若いO先生が「今年はドル平を中心にやってみたいので、実技指導してもらえませんか?」と言ってきた。
「ええで」
と受けて、6月初めのプール開きの翌日放課後にドル平講習をする。
寒くて、とてもみんなに入ってもらうような状態ではなかったので、O先生を生徒役にして、1時間足らず、ドル平の要領を見てもらう。
  そういうことがあったので、一応今年はドル平が市民権を得て、中学年を中心に高学年でも泳げない子はドル平指導ということで進むことになった。自分もプール監視で行ったときは、泳げない子グループを引き受けて指導した。
 
 昨年水が怖くて一度だけしか入らなかった五年生のs君が気になっていて、たまたま行った時に一応プールに入っていたので、他のやはりふしうきができない数名の子と一緒に小プールへ呼んでふしうきまでの指導をしてみた。顔つけから、ワニさんスタイル、片手浮かし、両手浮かしとやっていくと、1時間足らずで伏し浮きができるようになった。
その日の放課後、担任の先生から「s君、急にはりきって、明日は泳げるようになるぞ。て言ってやるの」という話を聞く。
、その後も2時間ほど指導して何とかドル平の形だけは教える。その後は見ていないが、学期の終わりにはほぼ全員25m行けるようになったという。
 
 4年生の監視に行ったら、やはりふしうき以前でつまづいている子が数名いて、その子たちを中心にふしうきからドル平へのとっかかりのところを教える。泳げている子どもたちでも、ドル平の形が悪いため、つぶれてしまっているというのがたくさんいた。それで、かたっぱしから、ドル平のリズムを教える。
 それから二三日したら、四年の担任の先生が、「急にみんな泳げるようになったんです。」と言ってくれる。
六年生にも、一人ふしうきができない子がいた。
「六年かかってふしうきもできないままにしておくというのは犯罪やで、」と冗談めかして言いながら、
その子の指導もしてみると、やっぱり1時間もかけないで、大プールでふしうきができるようになった。
 その子は帰って幼稚園の弟に「おまえ、ふしうきできるか?」と自慢していたという。
 
 ちょっと壁を開いてやればどの子も生き生きと動き出すのだということを改めて確信する。
 その壁を開いてやることができ、子どもの笑顔が見らたとき、教師の生き甲斐を感じる。